その昔、”エルドラ”と呼ばれる国があった。
飢えと疲労に喘ぐその地に、突如として現れた一柱の神――名はアウレウス。
この神はただ一つ、無尽の黄金を実らせる樹をその身より生み出すことで、人々に恵みを与えた。
樹の果実は、食せばたちまち疲労を癒し、尽きかけた精力をも蘇らせた。
民は歓喜し、神を崇めた。
……が、次第に変わっていった。
「なぜ疲れる必要がある?」「なぜ働く?」「なぜ祈る?」
――神が実らせる黄金さえあれば、それでいいではないか、と。
やがて信仰は形骸化し、神の加護を当然とする怠惰と傲慢に染まっていった。
神が黄金の供給を絶とうとしたその日、民は神を引きずり下ろし、
祈りではなく罵詈雑言と鉄鎖によって神を幽閉した。
光の届かぬ、地の底へ。
傷ついた神は、沈黙のうちに涙を流した。
幾千、幾万の時が流れるうちに、神の涙は大地を穿ち、黄金の潮となって地上へと溢れ出す。
その濁流に呑まれ、人々は次々と姿を失った。
やがてその跡に残ったのは、ヒトの形をした歪な木々――
その枝には、魔力を帯びた奇妙な果実が実っていたという。
中でも、神の深き悲しみと憎しみを存分に吸い上げたものは、まばゆい黄金色に染まっていた。
現代の魔術世界においてもなお、回復アイテムとして流通している『黄金の果実』。
だがそれは本当にただの「果実」なのか?
――おそらく、あなたが口にしたそれは。
誰かが奪い、誰かが捧げ、誰かが涙した時間、その代償でできているのかもしれない。
「……なーんて話を考えたんだけど、アンデルセン、どう思う?」
藤丸がどこか楽しげに問いかけると、隣の作家は本を閉じもせず、乾いた笑いを一つ漏らした。
「ははっ……随分と壮大な妄想だな。
まさか英雄業の片手間に神話創作とは、お前、よほど暇を持て余してると見える。
いっそその無駄な感性と語り口、どこぞの出版社に売り込んだらどうだ?
――まぁ、買い手がいればの話だがな。」
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