「――この空中落下も、奥が深くてさぁ……」
どこまでも青く、どこまでも広がる空と海。レイシフトの光が、晴れ渡る空に消えた直後、藤丸立香はもう、すでに悠々と空を泳いでいた。
風を切りながら自由落下するというのに、本人は至って余裕の態度。背中をそっと反らせ、空気抵抗を調整しては、まるで優雅な鳥のように滑空している。
「重心のかけ方と、腕の角度がポイントなんだ。あと、最後のクルッと回る動き、あれは――」
「マスターッ！！落ちます！！落ちちゃいますよおお！？！？」
突然、背後から聞こえてくる悲鳴混じりの声。振り向くと、そこには今まさにレイシフト完了して落下してきたマシュの姿。手足をバタつかせて、真っ逆さまに落ちてくるその様は、まるで落ちたばかりの羽の生えたぬいぐるみ。
「マシュは大げさだなぁ、ほら、空に投げ出されるなんていつものことじゃない？」
「そういうことを言ってるんじゃありません！！マスター！私に捕まっていてください！！」
風を切る勢いで近づいてきたマシュが、そのまま藤丸をしっかりと抱き寄せた。二人の身体が空中でひとつにまとまり、速度と軌道が安定する。
「今日のマシュはなんだか情熱的だね？」
「言ってる場合ですかあぁぁあぁぁああああああ！！！」
――ドッパァァァァァン！！
海が大きく、激しく、彼らを受け止めた。水しぶきが陽光に照らされ虹を描く中、ふたりの姿はあっという間に海中へと消えていった。
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